こころざし課題図書(H20年5月度)
前回、次世代リーダー育成塾“こころざし”の今月の課題図書を紹介しました。これまでも、塾長やアドバイザーの方の選ばれた数々の本を読んできましたので、毎月ここで紹介をしていきたいと思います。ついでに私の書いたレポートも付けて・・・(^^)。この本を読んでみたいと思うきっかけになれば幸せです。
まず、第一回目は「資本開国論」と「すごい製造業」です。平成20年5月度の課題図書です。
「“資本開国論”は、世界で起きている現象と大きな流れを的確にとらえ、わかりやすく描いている。社会主義国の崩壊による市場経済圏の労働力の増加と賃金の低下という問題、経済構造の自由化やIT革命によるオフショアリングや先進国の直接投資、などである。
労働力の急激な増加により、賃金が低下することによって賃金格差が広がる。コモディティー化が進み、大量生産品の製造は低賃金国へ移っていく。もうひとつ、ここでは書かれていないが、世界的な金余りによる投資マネーと新興国による旺盛な設備投資の影響によってエネルギーや原材料の高騰という問題も起きている。
いずれもこれからの企業経営への影響は非常に大きい。また、日本社会の規制や保護政策が企業の生産性や競争力の低下を招いているとの指摘もされている。
本書の中で提案をされているイノベーションによって生産性の向上を図ると共に、量の拡大から質の向上への転換を行わなければいけないという説に異論はない。しかし、このことが即、脱工業化ということにはつながらないと考える。
一方“すごい製造業”では、製造業を基盤とした日本型競争力は不滅であるとしている。日本のものづくり企業が開発力や技術革新力も備え、世界の先頭にたつ競争力を獲得しているということ、“ものづくり”は発想をモノに変換するためのあらゆる知識と知恵の結集した産業であり、文明を支える根幹的な産業であるという主張に、強い共感を覚える。
「現場力」という言葉で表わされている部品や装置の研究開発や企画設計、素材の加工や製造、あるいは技術や技能の高度化に向けた様々な工夫改善は、日本のものづくりの強さの源である。
また、日本という国の強みは、国民のまじめさ、几帳面さ、器用さにあり、製造業の現場での“対応力”や“改善力”を生かすのに適していると考える。
しかし、社会や産業の構造が変化し、消費者ニーズも高付加価値化とコモディティー化の2極化していることは、事実であり、新興国との価格競争に巻き込まれないためには、日本の製造業は、差別化・高付加価値化に向けて企画開発や技術革新を強化して、未知の分野に踏み出していかなくてはいけない。
世界的には多くの人々が貧困にあえいでいて十分な生活環境が整っているとはいえず、今後ともコモディティー製品の需要がなくなることはないと思うが、エネルギーや資源の大量消費に支えられた大量生産社会は、限界に来ている。
省エネで多品種少量生産の洗練された消費社会への転換、温室効果ガスの削減とエネルギー問題としての脱石油化を目指さなくてはいけない。環境問題・エネルギー問題など、人類の抱える多くの課題の解決に向けて、テクノロジーの役割はますます重要となってくる。
特に宮崎では太陽光・風力発電・バイオマスエネルギー等、自然エネルギー及び環境問題に関しての官民挙げての取り組みが必要ではないだろうか。
素材に付加価値を加え、アイディアを形に変えるためのモノづくりの重要性は変わらないが、野口氏の言うように優秀な従業員と現場力を十分に生かすための戦略性、経営力が求められている。
“ものづくり”は多くの可能性を秘めている。広義のイノベーションを実現するために、新しい分野への挑戦を柱にした経営ビジョンを組み立てていきたいと思う。」
これまで、製造業がリードしてきた日本経済ですが、競争がグローバル化し製造業が途上国にシフトしていく中、国内の製造業は何をしていけばいいのか、とても悩ましい問題です。
一つ言える事は、考える事を大企業だけに任せておくのではなく、地域で必要とされる仕事を考え、創り出すことが、中小企業に求められているという事です。
以上
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