こころざし課題図書(平成20年11月度)
内定者向け、12月度課題図書は、喜多川泰さんの「 手紙屋 」です。“働く”ということについて深く考えさせてくれるとってもいい本です。
“こころざし”平成20年11月分課題レポートは、佐々木雅幸氏の「 創造都市への挑戦 」でした。その時に提出した私のレポートを以下に掲載します。
1.創造都市への挑戦
以前から、サード・イタリアのことは聞いていました。社会が成熟し、国内での需要拡大が望めなくなった日本で、大量生産大量消費型社会を支えてきた産業からの転換を図っていくために、私たち中小企業が目指すべきモデルがそこにあると考えていました。資本主義社会では、投資回収の仕組みを組立てて、拡大再生産を繰り返していくものが発展をしていきますので、限界ぎりぎりの品質でコストを落として大量に供給することも必要です。
一方で、個別のライフスタイルや趣向に合わせた多様な需要があることも事実です。職人企業が相互に“競争”をしながら“協調”して創造的な仕事をすることで、新たな需要を生み出していくことは、その多様な需要をターゲットにしたこれからの戦略です。
特にサード・イタリアの地域では、起業家精神の旺盛な人が集まり、創造性を発揮し個性的な製品を作り出すために、人間的規模の企業の方がふさわしいと考えられていて、中小企業の存在価値をしっかり認識しているようです。
ヨーロッパには小企業憲章なるものがあります。小企業が産業の基盤であり、さまざまな政策の基本に小企業施策がなければいけないとするものです。変化の激しい時代に中小企業の変革能力と多様性が地域共同体の発展を支えるものとして期待されています。
自律性の高い地域経済を作っていかなくては、ますます地方は疲弊していくばかりです。中央ですべてを決め、全国一律で執行するやり方には明らかに限界があります。地方の資源を活用して地域の特性にあった産業を育てていくために、地域内で“多彩な産業連関構造”をつくり、“内発的な発展”を作り出していかなくてはいけないと思います。
本書の中で、職人企業(中小製造業)のネットワーク化や水平的なグループ化を実現するためには、相互信頼に基づく人間的ネットワークが必要だと述べられています。先日岩手ネットワークシステムの方々とお会いする機会がありました。彼らが20年かけて作ってきたネットワークは全人格的に付き合う人間的ネットワークのようです。定期的な飲み会の席で、さまざまなアイディアが飛び交い、それを丹念に拾い上げ、研究テーマとして育てます。さらにそれを産学官連携にて企業と大学が事業化に結び付けていく仕組みを作っています。
特に素晴らしいと感じたのは、岩手大学の先生方が積極的に外に飛び出してきていることでした。市町村から提供された施設に大学のサテライトを設置し、各地域に出かけて行って現場に近いところで特色のあるテーマで地元企業と研究をしています。これからの連携の在り方におおいに参考にさせて頂こうと思っています。
2.日本のモノづくり52の論点
ある発明家が発明に必要なものを3Lで表していました。Low Tech., Local, Loveの3つのLです。高い技術を追い求めるだけではなく、身近なものを大切にして、その本質を見極め、発想(見る角度)の転換によって、今ある物同士の新しい組み合わせを見出して、独自性のあるものを生み出していくのが発明である、と言っていました。今、もう一度足元を見つめ、地域内の様々な資源を活用するために“創造性”を発揮していかことが求められています。
岡野さんも本書の“国内製造業再生への人づくり”の中で述べられているように、産学官連携によるイノベーションを創り出していかなくては製造業の発展は望めません。そしてそのためには、産学官の三位一体と協力が必要になってきます。さまざまな団体が同じような活動をしていますが、どこもその力をうまく結集できていないように感じます。「創造の場」としてのネットワークとなっているかという視点で見直していきたいと思います。
産学官連携を機能させていくための方法論は、現実的にはなかなか難しい問題です。先日、関先生が中小企業者向けの講義の中で、日本の産学官連携は、欧米と比べると、かなり遅れているといっていました。まだまだ、それぞれの組織や団体の都合で動いていて、本来目指している相乗効果が出ていないと思います。お互いがもっと踏み込み、今持っているものを捨ててでも組もうと思わなければ、本当の意味での連携は難しいのかもしれません。
今日から、師走です。一年の締めくくりの月を悔いの日々として過ごしたいものです。
以上
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